細川成之奉行人飯尾常連奉書(『戦国遺文 三好氏編』3号)

 【原文】細川成之奉行人飯尾常連奉書(『緒形政夫氏所蔵文書』)

阿波国中使犬神輩在之云々、早尋捜之、可致罪科之旨、相触三郡諸領主、堅可被加下知之由候也、仍執達如件、

  文明四

    八月十三日   常連(花押)

   三好式部少輔殿

 

【読み下し】

阿波国中に犬神を使う輩これありと云々、早くこれを尋ね捜し、罪科に致すべきの旨、三郡諸領主に相触れ、堅く下知を加えらるべきの由に候なり、よって執達件の如し、

 

【現代語訳】

阿波国に、犬神を使う者がいるといいます。

早くこれを捜索し、処罰しなさい。

阿波三郡(三好・美馬・麻植郡)の諸領主に知らせ、堅く命令を下すべきであるということです。

よって通達することは以上の通りです。

 

【コメント】

文明四年(1472)、応仁の乱のころの文書です。

「犬神使い」は秩序を乱す者と見なされていたらしく、阿波守護の細川成之は奉行人・飯尾常連を通じて、「犬神使い」を捜索・処罰するように、阿波三郡の郡代・三好式部少輔に命じています。

三好式部少輔が、阿波三郡で警察権を行使する立場にあったことが分かります。

 

〈犬神〉いぬがみ

憑物(つきもの)の現象の一つ。また、その憑物の動物霊の名称。ネズミなどの姿をしているともいい、この目に見えない小動物が他人に害をなすという。これをもつ者は女系を伝わって継承するもののようにいい、その家筋は犬神持ちと呼ばれて恐れられ、縁組などを忌避されてきた。中国、四国、九州地方で多くいわれる。

(『日本国語大辞典』)


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