映画感想文:「ぼくが生きてる、ふたつの世界」主演:吉沢亮

平凡な事実を描くことで、「親の愛」というもっとも普遍的な、大切なテーマを描いている。
2024年に私が見た映画で、もっとも好きな作品。

吉沢亮さんがコーダ(聴覚障害のある親をもち、自身は聴覚に障害のない人)の男性を主演する。
耳が聴こえないがゆえに、子どものころから自分を守ってくれなかったと思っていた母が、実は自分を守り続けてくれていたのだ、とやがて主人公は気づくようになるところで、物語は終わる。
彼がそう思えるようになったきっかけは、父の強いすすめで上京し、仕事でも友人関係でもさまざまな経験をしたことによる。
コーダも、聴覚障害者も、健常者も、実はみんな平凡で普通なのだ……映画を見て、私はそう感じた。

たとえば、巨匠が巨額の資金をつぎこんで作ったすごい映像の作品は、それはヒットはするだろうけれど、私はそれを美味しく味わうことはできない。
一方で、いくつもの平凡な事実を連ねたストーリーによって平凡で大切なテーマを描くこの作品は、例えるなら、スーパーで買った食材でちょっとした美味しい料理を作ってみせた……そんな印象を受けた。
そういう料理が、きっと人を幸せにするのかもしれない。

映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」
主演:吉沢亮

コーダ CODA:children of deaf adults
聴覚障害のある親をもち、自身は聴覚に障害のない人。

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