阿波段銭条書写(『戦国遺文 三好氏編』参考1号)

 

【原文】阿波段銭条書写(『阿波国徴古雑抄』)

条々文正元六十一

一、阿州段銭、近年号河成幷訴訟無沙汰、太無謂、所詮、先々免除支証等不分明在所者、任本目録、堅可致催促事、

一、公物色々運上之時、船水手幷人夫、伝馬、海上警固、上乗等、用次第可申付事、

一、於論所幷欠所分者、任田教()、懸百姓可催促事、

一、替銭、国中幷他国諸商人等、専器用可申付事、

一、此間段銭催促之輩、如先々可申付事、

一、於段銭無沙汰在所者、可遣譴使事、

一、東条若狭入道知行料所段銭無沙汰無謂、堅可致催促、別当(而カ)令難渋者、可注進事、

一、故三好入道知行分同前、

一、片穂常陸入道、逸見豊後入道知行分同前、

一、中郡大経事、如先々領主可申付事候、

 

【読み下し】

条々、文正元六十一

一、阿州段銭、近年河成ならびに訴訟と号し無沙汰、はなはだいわれ無し、所詮、先々の免除の支証等不分明の在所は、本目録に任せ、堅く催促致すべき事、

一、公物色々運上の時、船水手ならびに人夫、伝馬、海上警固、上乗等、用次第に申し付くべき事、

一、論所ならびに欠所分においては、田数に任せ、百姓に懸け催促すべき事、

一、替銭、国中ならびに他国の諸商人等、器用を専らにし申し付くべき事、

一、この間段銭催促の輩、先々の如く申し付くべき事、

一、段銭無沙汰の在所においては、譴責使すべき事、

一、東条若狭入道知行料所段銭無沙汰いわれ無し、堅く催促致すべし、別して難渋せしむれば、注進すべき事、

一、故三好入道知行分同前、

一、片穂常陸入道、逸見豊後入道知行分同前、

一、中郡大経の事、先々の如く領主に申し付くべき事に候、

 

【現代語訳】

条々、文正元年(一四六六)六月十一日

一、阿波国の段銭の事は、近年、河成(洪水による荒田)や訴訟だと言って負担に応じようとしない。非常にけしからぬ事である。結局、過去の年貢免除の証拠が明らかでない土地は、本目録によって、堅く段銭を催促すべき事。

一、公物(荘園領主への年貢等)を運ぶ時、船水手・人夫・伝馬・海上警固・上乗(船の水先案内人)等は、必要次第に申し付けるべき事。

一、論所(所有権が争われている土地)ならびに欠所(所有者のいない土地)は、田の数の通りに、百姓に年貢を賦課して催促すべき事。

一、替銭(為替、または借金)は、国中と他国の諸商人等に、上手い具合に申し付けるべき事。

一、このうち段銭を賦課すべき者たちは、過去と同じように申し付けるべき事。

一、段銭を納めない土地は、譴責使を派遣すべき事。

一、東条若狭入道の知行所が段銭を納めないことは、いわれのない事であり、堅く催促すべきである。特に納めないようであれば、注進すべき事。

一、故三好入道の知行所も同じである。

一、片穂常陸入道、逸見豊後入道の知行所も同じである。

一、那賀郡大経の事は、過去と同じように領主に申し付けるべき事。

 

【コメント】

阿波国の段銭や年貢などに関して、おそらくは阿波国守護の細川氏から出された条々です。

「故三好入道」は、一次史料で確認できる、最古の三好一族です。

本文書の終わりから二条目に、「片穂常陸入道、逸見豊後入道」という人物が登場します。

彼ら二名は、三年後の文明元年(1469)七月十一日に出された細川成之奉行人飯尾常連奉書写(『戦国遺文 三好氏編』2)で、三好式部少輔といっしょに宛所として名を連ねています。  

このことから、「故三好入道」は三好式部少輔の父親か、近しい親族かもしれません。

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