細川成之奉行人飯尾之連奉書(『戦国遺文 三好氏編』参考3号)
【参考3】細川成之奉行人飯尾之連奉書(『阿佐文書』)
就国忩劇之儀、被仰付三好筑前守子細在之、随彼下知可被致忠節、若令難渋者、就註進主名、一段可有御成敗之由候也、仍執達如件、
永正五年
二月廿三日 之連(花押)
祖山
阿佐殿
【読み下し】
国忩劇の儀につき、三好筑前守に仰せ付けらるる子細これあり、彼の下知に随い忠節致さるべし、もし難渋せしむれば、主名を註進につき、一段御成敗あるべきの由に候也、よって執達くだんの如し、
【現代語訳】
阿波国の争乱については、三好筑前守之長に子細を命令してあります。
彼の命令に従って忠節にはげんでください。
もし命令に従わなければ、主だった者たちの名前を報告して、特に御成敗をなされるということです。
よって通達することは以上の通りです。
【解説】
宛所は「祖山 阿佐殿」となっている。
「祖山」は阿波国三好郡・美馬郡の「祖谷山(いややま)」のことである。
祖谷山の武士団「伊屋(いや)衆中」に宛てた文書が残っているが(細川澄元書状、『戦国遺文 三好氏編』22号)、「阿佐殿」も祖谷山の武士団の一人であろう。
「争乱については、三好筑前守之長に子細を命令してあります」とある。
之長は阿波三好郡の治安維持を担う郡代であり、宛所の「祖山 阿佐殿」も阿波の地名と人名であるから、文書冒頭の「国忩劇」とは、阿波の混乱・争乱を指していると思われる。
命令の流れとしては、
阿波守護・細川成之
↓
細川成之の奉行人・飯尾之連
↓
三好之長&阿佐殿
という流れになる。
「もし命令に従わなければ、主だった者たちの名前を報告せよ」とあるが、祖谷山の武士団「伊屋衆中」の中にも、三好之長の指揮だけでは従わない可能性のある連中がいたことが分かる。
之長の命令に従わない者を想定して、守護・細川氏からの命令を伝える奉行人奉書が出されたようで、それが今回とりあげた史料である。
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