古物市場日記 その3 強い業者にドン引きする
先日はインフルエンザで発熱したので、市場を休まざるをえなかった。
後遺症で倦怠感がひどく、解熱してからも1週間くらい寝ていた。
仕事は2週間のロスである。
さて、仕事始めに市場に行くことにした。
「古書・面白半分」は開業して間もない古本屋であるが、開業したばかりの古物商あるあるとして、仕入れが思うようにいかず、在庫が足りないという問題が起こっている。
解決策としては、
・市場の数を増やす
・一つの市場で落札する品数を増やす
・買取の広告を出す
などがあげられる。
古物市場は日本各地に無数に存在しているが、私は現在のところ1~2ヶ所の市場にしか出入りしておらず、この数を増やすことがまずは一つ。
そして、一つの市場でがんばって気合いを入れて、大量に落札するというチカラ技も必要になってくるだろう。
まずはチカラ技を発揮して、大量に、他の参加業者が引くくらいに大量に落札してやろうと、超絶ウルトラ気合いを入れて市場に向かった。
満員電車に揺られ、最寄り駅の自販機でエナジードリンクを補給するという不健康ムーブは、私の市場参加のルーティーンだ。
さあ、火に薪がくべられた。
心は燃える、気持ちは高ぶる。
さて、会場入りして、1ヶ月ぶりの市場が始まった。
最初に、侯爵・鍋島直大が大正4年(1915年)に書いた書状を落札できた。
鍋島直大は、最後の佐賀藩主で、鍋島直正(斉正、閑叟)の息子にあたる。
「これ以上は出せぬ」という価格よりは安く落札できたので、ホッと一安心した。
あとは、それほど高価ではない和本を少しと、明治から昭和戦前期の賞状やポスターなどを落札。
しかし、在庫枯渇に困窮している私としては、こんなものでは足りないのである。
もっと大量に落札せねば、と思っていた。
すると、江戸時代から明治時代にかけて書かれた和本、主に医学書が、大量に、それこそ数百冊ほど、目の前に出品された。
それらの和本には、図書館の本にあるようなラベルが貼られていたので、医学史の研究者から仕入れた品であろう、と推測された。
とりま、これは欲しいと思った。
ましてや、こちらは在庫困窮者である。
医学書のセリが始まった。
するとどうだろう、3~4人のいわゆる強い業者の方々が、それらの和本を、ものすげえ高値で入札し、競り合い、次々と落札していった。
まるで「殴り合い」のような修羅場である。
強い業者とは、豊富な資金を持ち、お得意様の顧客をたくさん抱えている販売力のある業者のことである。
資金と販売力にすぐれた強い業者は、それだけ高値で良品を落札できるというわけである。
私は「ほかの業者が引くくらいの勢いで大量に落札してやろう」
と意気込んで会場入りしたはずであった。
しかし、あたかもライオンたちが獲物の肉を奪い合うような「殴り合い」に直面し、逆にドン引きし、一度もそれらの医学書に入札することはできなかった。
資金で負け、販売力でも負けているわけだが、なにより完全に気持ちで負けたのである。
どうせ入札しても落札できんから早く終わってくれねえかな~、などと、ライオンに負けたハイエナのような、情けないことを考えていた。
疲れ切ったハイエナこと私は、それでも落札できた鍋島直大の書状などを抱えて、会場をあとにした。
今回の市場の反省点。
・医学書は仕方ないが、それでももっとたくさん入札・落札できたはず。次はもっとたくさん落札するべし。
・医学書をめぐって「殴り合う」強い業者に圧倒されてしまった。自分も「殴り合い」に参加するくらいの気持ちが大切であろう。
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