北野社領代官職補任状案(『戦国遺文 三好氏編』7号)

 

【原文】北野社領代官職補任状案(『筑波大学所蔵北野神社文書』)

当社領河内国讃良郡八ヶ所代官職之儀、任御請文之旨預ケ申候、然上者、年貢・諸公事物等、如先々可有納所候、猶不法懈怠者、改易可申候、依補任之状如件、

              松梅院雑掌

  永正二二年三月廿三日      俊重

   三好筑前守殿

 

【読み下し】

当社領河内国讃良郡八ヶ所代官職の儀、御請文の旨に任せ預け申し候、しかる上は、年貢・諸公事物等、先々の如く納所あるべく候、なお不法懈怠の者、改易申すべく候、よって補任の状、件の如し、

 

【現代語訳】

 北野社領の河内国讃良郡の八ヶ所の代官職のことは、御請文の通り、あなた(三好筑前守之長)に預けます。

 したがって、年貢・諸公事物等は、これまで通りに北野社に納入しなさい。

 なお不法行為や怠慢があれば、代官職を取り上げます。

 よって補任状は以上の通りです。

 

【コメント】

 年号が永正二二年となっていますが、これは「四年」の意味です。

「四」と書くと「死」と連想されてしまうため、「二」という字を二つ書いて「四」を表す、ということが、日本史上しばしば行われました。

 永正四年(一五〇七)、北野社が河内国讃良(さらら)郡に所有している社領の代官職を、三好之長に任せた史料です。

 この頃、三好之長は、管領細川政元の養子・澄元の家臣として行動していました。

 松梅院は北野社の有力な子院で、そこの雑掌という役目にある俊重なる僧侶が、この文書を出しています。

 主君の細川澄元ではなく、直接に三好之長に対して代官職に補任する文書が出されている点が、面白いと思います。


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