【除籍本を読む】第3回 お気に入りの一冊をあなたへ 読書推せん文コンクール 令和5(2023)年度入賞作品
書名:第3回 お気に入りの一冊をあなたへ 読書推せん文コンクール 令和5(2023)年度入賞作品
発行年:令和6年(2024)
発行者:博報堂教育財団
地元の図書館で除籍本として配っていたものを、無料でもらってきた。
小中学生が、自分が誰かにすすめたい本を紹介する推薦文を募集して、その入賞作品を集めた本。
「小学校1~3年生の部」「小学校4~6年生の部」「中学生の部」の3つの部門に分けられている。
3部門すべてに共通していたのは、若々しく豊かな感受性で作品を捉え紹介した推薦文がみられたこと。
なかには、明らかに若き芸術家の片鱗を見せているとしか思えないものや、これは本当に小学●年生が書いたのかと疑ってしまう感受性や世界観を感じさせる推薦文もあった。
私はこの本をファミレスで読みながら、大人の心を突き刺してくる名文の数々に、ダラーッと涙と鼻水を流した。
周りのお客さんが不審がらないように、少し顔をふせた。
個人的に気になったのは、読点「、」を使わない文章表現だ。
つまり、それほど長くないひとつのセンテンスで、一度も読点を使わないことで文に疾走感が生まれ、一筆書きで一気に文字を書くかのように、一気に自分の思いを表現した一文があった。
これは一人ではなく、数人の方にみられた。
また、内容とは直接関係ないが、推薦文を書いた小中学生のお名前で、いかにも今風な感じだが、優しさとかたくましさなどが感じられる、つまり命名したご両親の思いやネーミングセンスが感じられる素敵なお名前がたくさんあった。
その点でも、私を温かい気持ちにしてくれた。
ここまで良き良きなことを書いてきてアレだけど、ちょっと悪口も書いておきたい。
豊かな感受性で書かれた推薦文の数が、部門が上がるごとに減っている。
「小学校1~3年生の部」はほとんどすべてがすばらしい感性を感じさせるものだったが、「小学校4~6年生の部」になると、あれ、少し減ったかな、と思ってしまうのだ。
これが「中学生の部」になると、芸術的な感性で書かれた推薦文にまじって、平凡なもの、現実を見ずに理想を語ったもの、流行の思想や社会の風潮に飛びついているものなどが、いわば激増する。
選考委員は6名の方々で、肩書は博報堂のえらい人、文科省のえらい人、大学の教育学者(お二人)、児童文学作家、コラムニストである。
私は最初、部門によって選者が別で、「中学生の部」に前述のような傾向がみられるのは、見る目のない選者の責任だと思ったが、この推測の真偽はまったく分からない。
平凡であることは悪いことではないし、思春期の若者が理想や流行に惹かれるのは、むしろ当たり前だ。
しかし、それを非凡な入選作品として選んだのは、大人である。
この『読書推せん文コンクール』という本を読んで私が感じたのは、若者の感受性や個性のすばらしさと、大人の感受性のつまらなさと没個性、である。
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