古物市場日記 その4 北条時頼記図絵と古文書で殴り合う
前回の市場では、強い業者を相手にもっと殴り合う ( 競り合う ) 必要がある、と反省した。 そこで、今回の市場では多少の「殴り合い」を試みた。 『北条時頼記図絵』という和本が出品された。 北条時頼は鎌倉幕府 5 代執権で、元寇のころの執権・北条時宗の父親である。 「図絵」というタイトルどおり、文章に絵も入っている。 これは面白そうだ、欲しい、と思った。 そこで他の業者様と殴り合い、私は 6000 円まで声をあげたものの競り負けて、結局●万円で落札された。 惜しいと思ったし、もっと声をあげれば良かったかとも思ったが、あとで「日本の古本屋」で調べてみると、同じ作品が 16500 円で売られていた。 つまり相場からすれば、●万円では赤字になってしまう。 結果論だが、ここは競り負けて良かったのである。 さて、今度は古文書が 1 点、出品された。 シミに喰われて紙がくっついており、全部は読めない。 古文書の差出者と宛先の人物名は、普通は文書の奥 ( 左端 ) に書かれる。 折りたたまれたその古文書は、紙がくっついているせいで奥まで読めない。 誰が誰に出したものか分からないが、その冒頭には「水戸様」がどうたらこうたら、と書かれていた。 水戸様は水戸黄門で有名な、御三家の水戸徳川家のことである。 もしかしたら重要史料かもしれないと思い、どうしても欲しいと思い、これまた他の業者様と殴り合って、それなりの値段で競り落とした。 帰宅してから、シミでくっついた紙をペリペリと剥がしながら読んでいくと、「杉本茂兵衛」が「小沢権兵衛」に宛てた書状である。 調べてみると、杉本茂兵衛は大坂屋茂兵衛といって、江戸の飛脚問屋として活躍した人物であることが分かった。 内容を読んでいくと、「水戸様」が商人に借金を要求したことが書かれており、どうやら彼ら商人はそれをすごく嫌がっているようであった。 面白いと言えば面白い史料であるが、いわゆる有名人の古文書ではなかったため、少しだけガッカリした。 あとは、面白そうだと思った和本を何点か落札した。 ただ、これも「日本の古本屋」で調べてみるとけっこう安価なもので、自分が面白いと思ったものが、必ずしも相場が高いとは限らないのである。 しかし安いからと言って価値が無...